ナス(茄子)

 

 【ナス科 ナス属】

 

 

 なすは、インド東部が原産地といわれています。
     日本へは、中国から渡来し、すでに奈良時代には栽培されていました。
     当時の「正倉院方書」に、なすを献上したという記録があります。
      「なす」というよび名は宮中の女房言葉からきたもので、初めは「奈須比」とよばれていました。
     形も色もさまざまです。
     丸形やきんちゃく形、ひと口サイズの小なすから、中国産のへびなすのように長さ50センチもあるものまで、バラエティに富んでいます。
     世界に目をむければ、色も紫、白、黄、緑、まだらなどさまざまです。
     日本でも地方に在来品種が多くありました。
    もともと熱帯性の植物です。
     水分が蒸発しやすく、冷風が直接あたると同じ温度でもしなびやすくなります。
     ラップでくるんで10℃前後で保存するとよく、5℃以下だと低温障害を受け品質を損ないます。
     野菜の中で、なすの肌ほど光沢のいいものは、見あたりません。
    その独特の紫から、「なす紺」という色を表わす言葉が生まれました。
    なすの紫色はアントシアニンの一種ナスニンという色素によるものです
    正月の縁起の良い初夢の順番は、一富士、二鷹、三茄子と、昔(江戸時代)からいわれています。
    日本一の富士の山が一番縁起が良いのはうなづけますし、蒼空高く舞う鷹に引かれる気持ちも分かる気がします。しかし、ナスがなぜ第三位なのでしょうか。
    慶長17年(1612)の正月、駿府(今の静岡市)の徳川家康に、なすの初物が献上され、それを天婦羅などにして、食したとの記録があのます。
    実は、この時代の初物のなすは、一個が一両もし、諸大名が儀式に買い上げていたと言う話しです。
    この様に、江戸時代、正月に初物のなすを食べるのは、最高の贅沢で、余ほどの金持ちでなければ、かなわない夢でした。なぜなら、高温作物のなすを冬に作るには、油紙障子で温床を作り、馬糞や麻屑などを踏み込んだ発酵材で温度を取り、随分と手間暇かけなければなすは出来ませんでした。
    そのため、正月のなすは、庶民にとって高値の花でした。だからこそ、初夢になすが登場するのは、縁起が良かったと言えるのです。